#7: アメリカ医療最前線「増大するインストア・クリニック」
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![]() インストア・クリニックとはリテール店舗内で簡易医療を提供してくれるところで、病院と比較しても価格も安く、アポなしで立ち寄れ、また待ち時間も短いというところが特徴です。ただ医師は常駐しておらず、医師と看護師の中間にあたる職種で、限られた範囲内でベーシックな診察をしたり、処方箋を出したりする資格を有しているナース・プラクティショナーと呼ばれる人が診察に当たります。 2006年1月の時点で全米に60店舗しかなかったインストア・クリニックは2006年の12月には250店舗を超えるまでに店舗数が増大しました。 ![]() インストア・クリニック誕生にはアメリカの医療保険事情が大きく関わっています。アメリカの医療保険無加入者は国民全体の15%を占めます。このなかには低所得者で保険に入る余裕のない人々と、お金はあるが、医療保険を払いたくない人々とに分かれます。インストア・クリニックのターゲット層はどちらかというと無保険のミドルクラス層になります。この層は1,500万人とも言われており、相当な市場価値があると言えるでしょう。また、保険には入っているが忙しくて病院に行く時間がないという人もターゲットとなります。病院や一般診療所は待ち時間が長いなど、普段仕事を持っている人たちにとって行きづらいところです。予約なしで簡単に診察が受けられるインストア・クリニックはこういった人たちのニーズを満たしてくれるものと考えられています。 リテーラーにとって、インストア・クリニックのサービスから得られる収益は、場所代のリース料以外、直接的なものは特にないといわれていますが、メリットとして待ち時間での買い物や処方箋の購入など“ついで買い”による収入が期待できるということが言われています。しかし、リテーラーにとってインストア・サービスの展開の意義は、真の意味での“ワンストップ・ショップ”になるということがあるのではないでしょうか。ウォルマートやターゲットなどのバリュー・リテーラーに行くと、眼鏡屋、調剤薬局、銀行、写真現像などありとあらゆるサービスが提供されています。こういったバリュー・リテーラーに対抗するため、スーパーやドラッグ・ストアなどの従来型リテーラーは、取扱商品カテゴリーの拡張ばかりではなく、サービスの拡張による他社との差別化、そして顧客の囲い込みを図ろうとしています。インストア・クリニックの導入もこの一環といえるでしょう。 アメリカの医療市場において、プライマリー・ケアは消費者にとって不便なことが多く、不満の声が多いセクターでもありました。インストア・クリニックとは、このことに着眼し、便利で低価格なプライマリー・ケア・サービスを提供しようという試みであり、顧客主導型市場に対応したニュー・ビジネス・モデルであるといえます。ここでおもしろいのは、インストア・クリニック大手のミニットクリニックとTake Care(テイク・ケア)のCEOは、医療業界ではなく、それぞれ、ファースト・フード業界とトラベル業界という、まったく異なる業界の出身であるということです。医療の現場が顧客満足に焦点をあて、患者に選ばれる施設のあり方を模索する中、異種業界のアイディアの配合による新しいビジネス・モデルが次々と生まれています。そこにアメリカン・ビジネスならではの面白さがあるといってもよいかもしれません。 関連ブログはこちらです。 『ショッキングな誤解-米国病院編-』 『風邪をひいたらウォルマートへ!』 『病は気から!出張予防注射サービス』 ![]()
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